男は椅子に深々と座り、大きく一息をつく。パソコンの電源を入れ、目をつぶり、起動するのを待つ。仕事を定時で上がり、趣味に没頭するのかと思いきや、男の顔色は冴えない。むしろ憂鬱に見える。
時は2025年。ツイッターやフェイスブック、インスタグラムなどのSNSサービスは繁栄を続け、利用者は増え続けていく。80歳の未亡人がSNSサービスで恋人を探すのも珍しい話ではないという噂だ。2020年のコロナウイルスのパンデミック以降、新種のウイルスが
続々と蔓延し、対面しておしゃべりをすることが不可能になってしまった世界となった。人々はステイホームを強要され、ストレスをため続けていった。人間の本能だろうか。そのストレスを代償するように、人々はSNSサービスにのめり込んで行く。現実世界は次々とインターネット上に代替され、一日中パソコンの前で生活する人も珍しくない。
対面しておしゃべりをすることがかなわない以上、新規の友人開拓や、恋人の募集もインターネット上で行わなくてはならなくなった。ウイルスが蔓延しているため、外出することが敵わないのだ。人々は新規のコミュニケーションを求め、全てのSNSに本名を登録し、顔写真をアップロードした。詳細なプロフィールを掲載した。他人と繋がるきっかけを少しでも増やしたいからだ。